たくさんの道草と、ものづくりの合間の独り言。
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友人の近所に住むおばあちゃんが、夜中の入浴中に亡くなったそうだ。
そのおばあちゃんとの思い出に、子どもの頃 昼食中の台所を覗き込んで見付かった時の気まずさがあると知って笑ってしまった。
私にも似たような思い出がある。
実家は、私が生まれる前からささやかながら賃貸業を営んでいる。副収入とも呼べないような額で実家の土地を緑で区切ってはお年寄りに貸し、そこにみな好き好きに家を建てて住んでいた。
その中のひとつは、実家の裏手からその先の路地に通じる細い細い抜け道のそばにあって、質素な小屋におばあちゃんが一人で住んでいた。そばと言っても細い道のこと、そこを通るには小屋の目の前、”玄関口”を横切らなくてはならなくて、いつもおばあちゃんに気づかれないようにそっと、足早に通り過ぎた。なぜなら、その小屋は古く、暗く、いつも雨戸は閉め切られ、加えて中に居るはずなのに気配はなくて、そんな所にお年寄りがひとりで住んでいることを想像すると怖かったからだ。
でもある日、”玄関口”の閉め切られた雨戸に隙間があることに気が付いて足が止まった。いけないこととは思いつつ、そーっと中を覗いてみると…おばあちゃんが、こっちを見て微笑んでいた。
見付かった気恥ずかしさと、お年寄りとの触れ合いのない生活環境だったからしわくちゃなおばあちゃんへの恐怖心で、全速力で逃げ帰った。
その日から、おばあちゃんは私や友人達が通るのを待つようになった。それまでもきっと、私達が通るのを見ていたんだ。
「あい、食べないねー(ほら、食べないかい?)」
と呼び止めては私達にマシュマロやチョコレートをくれた。
薄暗い部屋から伸びるしわくちゃで刺青(*1)のあるその手からお菓子を受け取るのは、まるで魔女の誘いに乗るような後ろめたさと、異次元との交流みたいな非現実感があった。
おばあちゃんは、真っ白くて長い髪を頭のてっぺんのやや後ろでお団子にしてジーファー(*2)でまとめた、瞳の大きな小柄な人で、しわくちゃだけどよくみると可愛いお顔をしていた。
私はだんだん図々しくなって、自分からお菓子をねだったりもした。でもお菓子がないとすぐに帰った。何を話していいか分からなかった。
おばあちゃんが亡くなったのがいつだったか、全く覚えていない。
小屋は数年放置されたままで、でもとうとう取り壊すことになって、その前に父と整理しようとそれまで知らなかった出入り口から中に入ってみて驚いた。間取りは土間と6畳一間のみで、火鉢がひとつと鍋やヤカンがあるだけだった。魔女みたいに思っていたのに、お宝は何にもなかった。
小屋が壊された跡地は、隣に住んでいたおばさんが畑にして賃料と一緒に野菜を持って来てくれた。そのおばさんも、抜け道を挟んで反対側のおばあちゃんもそのお隣もいなくなって、今ではコンクリートの駐車場になっている。そうなって初めて、実家のシンボルであるガジュマルの大木の裏側に住んでいた人たちの目線を見た。この緑の隙間から、子どもだった私達をお年よりは見ていたんだなあ、と思った。
*1刺青/既婚女性が手の甲に入れた。ハヂチと呼ばれる。
*2ジーファー/銀製のかんざし。片方にスプーンのような窪みがある。
そのおばあちゃんとの思い出に、子どもの頃 昼食中の台所を覗き込んで見付かった時の気まずさがあると知って笑ってしまった。
私にも似たような思い出がある。
実家は、私が生まれる前からささやかながら賃貸業を営んでいる。副収入とも呼べないような額で実家の土地を緑で区切ってはお年寄りに貸し、そこにみな好き好きに家を建てて住んでいた。
その中のひとつは、実家の裏手からその先の路地に通じる細い細い抜け道のそばにあって、質素な小屋におばあちゃんが一人で住んでいた。そばと言っても細い道のこと、そこを通るには小屋の目の前、”玄関口”を横切らなくてはならなくて、いつもおばあちゃんに気づかれないようにそっと、足早に通り過ぎた。なぜなら、その小屋は古く、暗く、いつも雨戸は閉め切られ、加えて中に居るはずなのに気配はなくて、そんな所にお年寄りがひとりで住んでいることを想像すると怖かったからだ。
でもある日、”玄関口”の閉め切られた雨戸に隙間があることに気が付いて足が止まった。いけないこととは思いつつ、そーっと中を覗いてみると…おばあちゃんが、こっちを見て微笑んでいた。
見付かった気恥ずかしさと、お年寄りとの触れ合いのない生活環境だったからしわくちゃなおばあちゃんへの恐怖心で、全速力で逃げ帰った。
その日から、おばあちゃんは私や友人達が通るのを待つようになった。それまでもきっと、私達が通るのを見ていたんだ。
「あい、食べないねー(ほら、食べないかい?)」
と呼び止めては私達にマシュマロやチョコレートをくれた。
薄暗い部屋から伸びるしわくちゃで刺青(*1)のあるその手からお菓子を受け取るのは、まるで魔女の誘いに乗るような後ろめたさと、異次元との交流みたいな非現実感があった。
おばあちゃんは、真っ白くて長い髪を頭のてっぺんのやや後ろでお団子にしてジーファー(*2)でまとめた、瞳の大きな小柄な人で、しわくちゃだけどよくみると可愛いお顔をしていた。
私はだんだん図々しくなって、自分からお菓子をねだったりもした。でもお菓子がないとすぐに帰った。何を話していいか分からなかった。
おばあちゃんが亡くなったのがいつだったか、全く覚えていない。
小屋は数年放置されたままで、でもとうとう取り壊すことになって、その前に父と整理しようとそれまで知らなかった出入り口から中に入ってみて驚いた。間取りは土間と6畳一間のみで、火鉢がひとつと鍋やヤカンがあるだけだった。魔女みたいに思っていたのに、お宝は何にもなかった。
小屋が壊された跡地は、隣に住んでいたおばさんが畑にして賃料と一緒に野菜を持って来てくれた。そのおばさんも、抜け道を挟んで反対側のおばあちゃんもそのお隣もいなくなって、今ではコンクリートの駐車場になっている。そうなって初めて、実家のシンボルであるガジュマルの大木の裏側に住んでいた人たちの目線を見た。この緑の隙間から、子どもだった私達をお年よりは見ていたんだなあ、と思った。
*1刺青/既婚女性が手の甲に入れた。ハヂチと呼ばれる。
*2ジーファー/銀製のかんざし。片方にスプーンのような窪みがある。
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Profile
HN:
TOBARU SHOKO
性別:
女性
職業:
Creator
自己紹介:
フリーランスのジュエリー作家から調理の世界に寄り道後、アートのクリーエーションに魅了されて現在に至る。
育児支援施設にて親と子を対象とした造詣教室「親子でアート♪」を手掛ける他、下手の横好きで書きモノも少し。
アクセサリー制作は作家の補助、
初心者対象の教室、趣味での制作、など。
ちなみに画像は家宝のPIRELLI Calendar 96 by Peter Lindberghより。
okinawa出身。
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