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たくさんの道草と、ものづくりの合間の独り言。
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東京は世田谷文学館で開かれていた「石井桃子展」に行ってきました。
石井桃子さんは日本を代表する児童文学の草分け的存在で、「トム・ソーヤーの冒険」「ピーターラビットのおはなし」の翻訳や「ノンちゃん雲に乗る」の作家と言えば、ピンと来る方も多いかもしれません。期間中 「ぐりとぐら」「そらいろのたね」「いやいやえん」などの作者である中川李枝子さんの講演会も開かれ、私はもう大興奮!ぐりぐらのあのパンケーキには、誰でも一度は憧れたのではないでしょうか!
さて、子どもの頃に読んだ本、忘れられない物語と言うと何があるでしょう。絵本、マンガ、児童名作選…。中川さんは、戦時中で物のない時代、ご両親が選り分けては本棚に並べてくださった少年文庫を愛読され、そのことをとても感謝していると仰っていました。子どもが手にする本には、まず親の選別という過程があるのですね。
子ども達の生活には、楽しさと同時に子どもだからこその悩みがあります。大人からどう見えようとも当人にとっては一大事で、中川さんもそんな問題を抱えては悩み、親に反抗したりしながら読んだ本の中で、同じように悩む世界中の子ども達と出会いました。それぞれの社会、環境で育ち励まし合っている子ども達の冒険にはらはらドキドキしては「みんな悩んでるんだ!根っこは同じだ!」と安心した経験から、本は、悩める子ども達の避難所であり、友達であり、先生にもなる。正しく導いてくれるのだ。と思うに至ります。ただし、それには本の中にも現実にもちゃんとした大人が子どもの周りにいる環境が不可欠、とのこと(…これが一番難しい!?)。また、聴講者からの子どもを本離れから引き戻すにはどうしたらよいかという質問には、 生まれたときからの読書訓練(本の読み聞かせやたくさん話しかけるなど)で、テレビよりも先に読み聞かせに慣れさせることを解決法として挙げ、自ら進んで本を手に取りたくなるように物語に馴染ませることの大切さと、3L…Love,Laugh,Learn を大事にしながらとにかく自分が楽しんで、子どもを引き込み一緒に楽しむこと、を強調されました。
 
展示会場は、石井桃子さんの生い立ちに始まり、思い出の品々や「ピーターラビットのおはなし」「うさこちゃん」の訳書をはじめ、「ノンちゃん雲に乗る」「3月ひなのつき」など様々な本の制作過程、また、絵本の原画や親交のあった方々とのたくさんの言葉に溢れていました。特に興味深かったのは、50年経って思い出される子どもの頃の記憶についての考察です。両親との肌の触れ合いをはじめ日常の風景が多いことを振り返り、特別な出来事が思い出になるわけではないこと、それらはどういうきっかけで子どもの心に残るのだろう?との問いなど、共感できる部分が数多くありました。そして最も印象深かったのは、翻訳を手掛けられたひとつ 「百まいのドレス」 という作品に寄せた一行です。
お話しは、1950年代のアメリカのとある小学校が舞台です。そこに転校してきた貧しいポーランド移民の女の子ワンダが 私は100枚のドレスを持っている と言い張ったことでいじめられてしまうのですが、ある日突然、紙に描かれた美しいドレスの絵を残して学校を去ってしまいます。彼女は、本当に100枚のドレスを持っていたのでした。
人種差別やどこにでもある子どものいじめ、失って初めて分かる痛みや許しを含んだ教訓の他にも、歴史的背景という深いテーマが隠されているこの物語に、石井さんはこう寄せています。
 
~ワンダが100枚のドレスを描いて行くうちに、自分の才能の芽を見出したのではないかと心を打たれたのです。

児童文学は、読む子ども達を成長に合わせて楽しませ、たくさんのことに気付かせてくれます。その子どもたちと一緒に楽しみながら、私達も今一度児童文学に触れてみるのも良いかもしれません。
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Profile
HN:
TOBARU SHOKO
性別:
女性
職業:
Creator
自己紹介:


フリーランスのジュエリー作家から調理の世界に寄り道後、アートのクリーエーションに魅了されて現在に至る。
育児支援施設にて親と子を対象とした造詣教室「親子でアート♪」を手掛ける他、下手の横好きで書きモノも少し。
アクセサリー制作は作家の補助、
初心者対象の教室、趣味での制作、など。
ちなみに画像は家宝のPIRELLI Calendar 96 by Peter Lindberghより。
okinawa出身。

                 
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